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塚本晋也監督『斬、』トークイベント(inキネカ大森)

映画「斬、」オフィシャルサイト | 2019年9月4日(水)Blu-ray&DVDリリース
塚本晋也監督の最新作『斬、』のトークイベントが2月1日(金)キネカ大森で開催されるとのことだったので足を運んでみました。
ちなみにキネカ大森は指定席ではあるものの、インターネットでのチケット購入に対応しておらず、直接現地に行かないとチケットが購入できないのですが、1月29日(火)に買いにいった時点ではまだ自分以外2人くらいしか席が埋まっていなかったので、おいおい大丈夫かと思ったものの、当日はほぼ満席でした。

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上映後のトークイベントに登場する塚本晋也監督 ※写真撮影タイム

塚本晋也監督と言えば、『シン・ゴジラ』でのタオルを首からかけた教授や、マーティン・スコセッシの『沈黙』で磔にされるモキチの役など俳優としても活躍されていますが、監督としては『鉄男』や『[asin:B01FE86GWI:title=バレット・バレエ]』、最近では『[asin:B01E9X2TGG:title=野火]』などの作品で知られています。

その独特な世界観からコアなファンが多いものの、ほぼ自主製作映画の形式で作品づくりがおこなわれており、あまりメジャーな劇場では上映されていません。東京でも現時点(2019年2月4日)でみられるのはキネカ大森と渋谷のユーロスペースのみ。あとは3月から阿佐ヶ谷のミニシアターでもやるようです。

なぜ人は人を斬るのか」というキャッチコピーと、江戸時代の終わりを舞台にした映画だということで、てっきり綱淵謙錠の『斬』を原作にした作品かと思っていましたが、全然関係なかったです。

ちなみに、『斬』の紹介分はこちら。

“首斬り浅右衛門(あさえむ)”の異名で天下に鳴り響き、罪人の首を斬り続けた山田家二百五十年の末路は、明治の維新体制に落伍しただけでなく、人の胆をとっては薬として売り、死体を斬り刻んできた閉鎖的な家門内に蠢く、暗い血の噴出であった。もはや斬首が廃止された世の中で、山田家の人間はどう生きればいいというのか。豊富な資料を駆使して時代の流れを迫力ある筆で描き、「歴史小説に新領域を拓いた」と絶讃を博した、第67回直木賞受賞の長篇大作。
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そして『斬、』の概要はこちら。

監督の塚本は、「1本の刀を過剰に見つめ、なぜ斬らねばならないかに悩む若者を撮りたいと思った」と明かし、江戸時代末期の農村を舞台に、一人の浪人と周囲の人々を通して描かれる「生と死」の問題に迫る。時代劇ながらも現代人が持つ感覚を投影させ、開国論で揺れた時代を描いている。
斬、 - Wikipedia

ちょっと似ている?

ただ、塚本監督の『斬、』は、前作『野火』で描かれていた“人と人が争うということはどういうことなのか”という主題が根底にあるのと、過去の塚本作品にも共通する「鉄」に対するある種のフェティシズム(鉄男は男と鉄が合体する話だし、バレット・バレエは拳銃を求める男の話だし)に満ちているのに対して、綱淵謙錠の『斬』は、歴史の変わり目に翻弄される若者の苦悩と、1人の女性に振り回される男たちといったテーマが描かれており、はっきりと別々の文脈でできあがっている作品というのが分かります。

『斬、』の中身についてですが、ストーリーはかなりシンプルで、登場人物はほぼ3人(池松壮亮蒼井優塚本晋也監督本人)。舞台も農家と山の中くらいしか描かれていません。ちなみに全編山形でロケをしたとのこと。
主役である池松壮亮さんのアサインが決まったのが結構ギリギリだったらしく、かなり時間のない中での制作だったが、かなりスムーズに進行したとおっしゃっていました。プロの俳優さんに対してあまり演技指導はしておらず、「リハーサルは1回やるけどあとはその場でのお楽しみ」と発言されていましたが、あとからそれを聞いて作品を改めて思い返してみると非常に真に迫った演技で池松壮亮蒼井優コンビのすさまじさを感じました。
音楽は石川忠さんです。塚本作品といえばこの方ですね。実は完成前に亡くなってしまったそうで、監督が過去作品の音楽をつなぎ合わせて編集したとのことです。これにより、結果的に第51回シッチェス・カタロニア国際映画祭の最優秀音楽賞を受賞していますが、確かに緊張感のある音楽で、心がざわざわするような、そんな曲でした。

パンフレットが真っ黒な表紙でかっこいいデザイン。中は全ページフルカラーです。

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『斬、』のパンフレットと『冒険監督』

キネカ大森では『冒険監督』も販売されており、こちらの本にトークイベント後にサインしてもらいました。家宝とさせていただきます。
冒険監督