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映画『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』感想・レビュー

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Beyond the Edge

初代『ゴジラ』が公開されたのが1954年。それから60周年ということで公開されている『GODZILLA ゴジラ』が話題になっている。

1954年の『ゴジラ』公開1年前に、人類は地球で最も高い山に到達した。その偉業達成から60周年を記念して作られ、昨年ニュージーランドで公開されたのが映画『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』だ。

『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』はドキュメンタリー作品で、実際の記録等を元にして制作されており、当時の映像や写真、関係者の証言とチャド・モフィット(エドモンド・ヒラリー役)やソナム・シェルパテンジン・ノルゲイ役)らによる再現映像で構成されている。

1950年代前半のエベレスト情勢というと、チベット側ルートは中国支配の影響で使用できず、ネパール政府は年1組限定の入山許可を発行していた。1952年にはスイスが残り僅かの地点に到達。1954年にはフランス隊が、1955年にはスイス隊が入山許可を発行されており、イギリス隊にとっては1953年のアタックが初登頂のラストチャンスだと考えられていた。

イギリス連邦にとって国家の威信を賭けたプロジェクトであり、400人の大登山隊が結成された。その中にエドモンド・ヒラリーテンジン・ノルゲイも含まれていた。劇中では、さながら地球を脱出する多段式ロケットが燃料タンクとエンジンを次々に切り離していくように、荷物を運び終えたシェルパ達が、順次下山していく様子が描かれていた。

シェルパの中でもリーダー格であったテンジン・ノルゲイは稼ぐことが目的であった他のシェルパと異なり、エベレストの頂上に登りたがっていたと、テンジンの子孫の証言も流れていたが、そのことがエドモンド・ヒラリーとの初登頂につながっていくことになる。

印象的だったのは、当時の登山に同行した医者の「当時はエベレスト頂上で人間が生きれるのかすら分かっていなかった」という証言で、前年に頂上付近までスイス隊が到達していることを考えるとやや大げさすぎる表現とも言えるが、それくらい過酷な環境だと捉えられていたのだろう。

頂上付近でのヒラリーの回想で、「近所の山だったら諦めて帰ったと思うが、ここはエベレストだ。登るしかない」といった旨のセリフがあったが、偉業を成し遂げる時というのは多少の無理は乗り越える必要があるのだなと感じた。(もちろん危険を犯してまで登るべきかという部分には賛否両論あるだろうが)

個人的にはエベレスト登山というと、『神々の山嶺』(かみがみのいただき)という漫画の影響もあってジョージ・マロリーの印象が強いが、人類の偉大な挑戦への記録として、『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』を1度は見ておくべきだろうと思った。
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原作を『餓狼伝』や『陰陽師』で知られる夢枕獏が、『孤独のグルメ』で再評価されている谷口ジローが作画を務めた登山漫画の傑作

ただ、3Dで公開されているのだが、ヒマラヤの山々が不自然に浮き出ているように見えてしまうのがマイナスポイント。特に過去の映像との相性があまり良くないので、こういったドキュメンタリー風の作品ではむしろ3Dを使わない方がいいんじゃないだろうかと思わされた。

日本では上映されている劇場が少ないのが難点。ちなみに角川シネマ有楽町では、公開に合わせて下記の展示なども行われていた。
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作品中にクレバスにはしごをかけるシーンがあるが、この木材も1950年代にクレバスにかけられたはしごの一部だそうだ。