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映画『たまこラブストーリー』感想

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『たまこラブストーリー』公式サイト

たまこまーけっと』について

僕は正直『たまこまーけっと』というアニメがあまり好きではありませんでした。


展開が唐突なわりに説明が少なかったり、恋愛アニメなのかと思ったら全然進展がないし、何より主人公が“天然”だからという理由で内面が描かれず、他の登場人物ともいまいち会話が噛み合ってなかったりで、何がしたいのかよく分からない、絵柄は綺麗だけど中身の無いアニメという印象でした。


京都アニメーションは原作付きの作品を担当することが多く、『たまこまーけっと』は珍しくオリジナル企画ということで、始まる前は楽しみにしていたのですが、最終話まで見終わってがっかりしてました。

たまこラブストーリー』公開

そして、テレビアニメ版が終わってから約1年が過ぎ、劇場版として『たまこラブストーリー』が公開。
上述のようにあまりポジティブなイメージを持っていなかったのですが、「たまこ、むけました。」というキャッチコピーと髪をほどいたたまこのイラストにただならぬものを感じたため、観ることにしました。以下感想(ネタバレ含む)です。


今作のストーリーは非常にシンプルで、ヒロインの北白川たまこに恋している幼なじみの大路もち蔵が告白するまでの葛藤と、告白されたたまこがもち蔵に返事をするまでの葛藤を描くというものです。

ストーリーがシンプルになったことで、物語の展開としては一本道にはなるものの、1つ1つの演出がストーリーに絡んだ形で効果的に表現されていました。
特に印象に残ったのは次の3つの場面です。

印象に残ったシーン

1つ目はやっぱりもち蔵が告白するシーン。そこまでの流れから、告白するんだろうなっていうのがもう分かっているんだけど、それでも引きこまれちゃいましたね。
話したいことがあるって言って、2人が鴨川の飛び石のところに来た時に、幼いたまこが飛び石を渡っている時にもち蔵に驚かされて川に落ちたっていう過去の回想が流れるんですけどね。ああ、これ絶対にたまこが告白に驚いて川に落ちるんだろうなって思うじゃないですか。そうなるんですよ。裏切らない。しかも足を滑らして手を掴むという一瞬の溜めもあって完璧ですねこれは。その後たまこが駆け出すシーンも最高だった。


2つ目はインフルエンザで学校が休校になった場面。たまこの家に同級生から電話がかかってきて、休校になった旨をもち蔵に連絡しなきゃいけない(お互い気まずくなっている)というシーンがあって、ははーんインフルエンザが流行っているっていう伏線を、強制的に会話させるための道具として使うのかーと思ったらそうじゃなくって、あえてもち蔵に伝えないことによって、誰もいない学校で直接告白の返事をしようとするんですね、たまこは。しかし、もち蔵は学校には来ず、東京へ向かうというのを常磐みどりから教えられたたまこは、もち蔵のいる京都駅へ走り出します。うーむ青春。


3つ目はその直後、東京に行こうとするもち蔵にたまこが京都駅まで追いかけてきて告白の返事をするところ。スクーリーンが真っ暗になった瞬間、「あ、やられた」と思ったのもつかの間、たまこのセリフですよ。もうね、たまりません。


これ以外にも、告白後のもち蔵に「星とピエロ」のマスターがかける言葉や、留学を考えている朝霧史織がホームステイに行くことに決めた時に「誰だって最初は何もかも初めてだもんね」というセリフなど名言も揃ってました。個人的には、鴨川でもち蔵が叫ぶシーンも好きですね。

今作のテーマについて

恋愛においては、告白した時点で、上手くいったとしても、あるいはそうでなかったとしても、それまでと同じような関係というのは難しいわけで、告白というフェーズは相手との関係に変化を迫るものであると言えます。
たまこラブストーリー』のテーマも、「変化」(高校生なんで「成長」でもいいかもしれません)なんじゃないかなと勝手に思っています。


今作ではたまこの周囲のキャラクターの多くがそれまでと異なる自分になろうとしています。みどりも、かんなも、史織も、そしてもち蔵も。そんな中、もち屋を継ぐ以外に将来のことを考えていない自分に気づくたまこ。そして変化を迫るもち蔵の告白。最初は逃げ出したり、避けたりしますが、周囲の人々と話たりする中で、徐々に自分でも変わろうとする決意を固めていきます。


今作はその変化の過程が非常に丁寧に描かれている作品で、個人的にはテレビアニメ版だとまったく感情移入できなかったたまこが、初めて人間味のあるキャラクターとして描かれています。


こういうのがあるからアニオタはやめられないんだよなって思わされるような、そんな作品でした。
しかしまあ、これ見るとデラ・モチマッヅィとか南の島とは一体何だったのかってなりますね。
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