❏ 「ゆとり世代」に気づいて欲しいこと
結論から言うと、この記事読んでて「ゆとり世代」の方が多様な価値観に対して慣用で、むしろ社会常識(笑)みたいなの振りかざすおっさん達の方が不寛容なのでは、と思いました。
以下、読んで感じたことを書きます。
正解は1つじゃないとか言いながら規範を押し付ける矛盾
岩瀬氏が若手と対話して感じたこととして、
彼らとの対話で感じたのは、彼らが
- 社会は機能性・合理性だけではなく、一定のプロトコール・規範のもとで動いていること
- 自分とは違う世界観をもった人たちがたくさんいて、一つの正解があるわけではないこと
- いい仕事をするため、自分のやりたいことを実現するためには、その共通言語に沿ったコミュニケーションが不可欠となること
に、必ずしも気がついていないということだ。
って言ってますけど、なんでそういう結論になるんですかね。
そもそもアンケートの時点で、
事前に彼らが職場で「なんで?おかしくない?」と疑問に思っていることを書いてもらい、それをピックアップして私と特別ゲストと会場の皆さんで話し合うというもの。
とあるとおり、「疑問と思っていることを書け」言われたから書いてるのであって、疑問には思っていても、その上で岩瀬氏が言ってるようなことを理解していて、実際のところ表面上は“一定のプロトコール・規範”通りに振る舞ってると思います。というかそういうの理解してない人がADKだとかリクルートキャリアみたいな企業に入れないような。なぜかというと、“一定のプロトコール・規範”通りの振る舞いを求められるのが今の就職活動だからです。
「自分のやりたいことを実現するためには、その共通言語に沿ったコミュニケーションが不可欠となる」なんてことは、就活を通してみんな気づいてると思いますよ。今の若者は。
だいたい、「自分とは違う世界観をもった人たちがたくさんいて、一つの正解があるわけではない」って言っておきながら「社会は機能性・合理性だけではなく、一定のプロトコール・規範のもとで動いている」なんて押し付けているのが矛盾してますよね。本当にいい仕事をしたいと思っているなら、機能性・合理性を求める若者のコミュニケーションのプロトコールにおっさんの方が合わせたほうがいいと思います。
あと、「自分とは違う世界観をもった人たちがたくさんいて、一つの正解があるわけではないこと」ってそれまさにゆとり教育が目指した方向性の1つかと。実態はどうあれ、単なる若者批判ならともかく、ゆとり世代を批判するのにそのロジックは通用しないと思うんですよね。
タイトルにも書きましたが、“「ゆとり世代」に気づいて欲しいこと”として挙げられているようなことは、ゆとり世代のほうが気づいてるんじゃないかなあと感じました。
大企業を選ぶと安定志向なのか?
例として挙げられていた若手の疑問
「会社にビーサンで通勤しちゃダメと言われた。なぜ?」
「社内の飲み会でなんで先輩にお酌しなくちゃいけないの?」
「私は事務職だから外部の人に会うことはない。なんで化粧しろって言われるの?」
「大企業を選んだお前は安定志向だと言われるが、大企業が安定なんて思ってない。なんで上の世代はそう思うの?」
「自分は目をみてハキハキ挨拶するが、なんでみなPC見ながらしか挨拶してくれないのか?」
に対して、
もちろん、本当に自分にとって大切なことであれば、守る必要はない。ビーサンで通勤することが自分のアイデンティティなのであれば、お酌をしないことが自分の信念であれば、それを許す会社を選べばいい。でも、そこまでではないのであれば、本当に大切なものを守ったり、いい仕事をするためにも、いろいろと気を使うことが必要となろう。
って返してるんですけど、例に挙げられてる事例のうち、上の2つしか回答できてません。
例えば、残りの3つうち「自分は目をみてハキハキ挨拶するが、なんでみなPC見ながらしか挨拶してくれないのか?」についてはどう説明するんですかね。目上の人は目下の人間をぞんざいに扱ってもいい、というプロトコールなのでしょうか。
ビーサン、酌、化粧の話は合理性とプロトコールの対立の話ということで、まあ理解はできます。それを押し付けるという考えには賛同しませんが。
しかし、大企業を選んだら安定志向みたいな物言いは単なる価値観の違いに過ぎませんし(岩瀬氏がBCGを選んだように、ファーストキャリアとして大企業を選んだけど、いずれ起業する予定の人もいるかもしれません)、ハキハキとした挨拶はむしろ“一定のプロトコール・規範”においてこそ求められることなんじゃないでしょうか。
このあたり、「社会は機能性・合理性だけではなく、一定のプロトコール・規範のもとで動いていること」に気づいていないと感じたという部分と整合性が取れていないので、ちゃんと回答して欲しいところです。
信頼の勝ち取り方について
色々書きましたが、この記事で結局言いたいことはここなんだと思います。
若いうちに一番大切なのは、外部の人からの「信頼」を勝ち取ることだ。信頼がある人は、たくさんのチャンスが回ってくる。逆もまたしかり。そして、信頼を勝ち取るためには、単に自分の小さな仕事だけを着実にこなせばいいというわけではないのだ。外部の人たちとどのように接するかという能力も見られている
いるのだ。
これについては概ね僕も賛成です。
ただ、信頼を勝ち取るために“一定のプロトコール・規範”を守るべきというのは本末転倒かなと思っていて、着実に仕事をこなしたり、成果を出すためにプロトコールを守る必要があるというのであれば守ればいいと思いますが、プロトコールを守ることの優先順位の方が上にくるというのはちょっと違うと思います。
余談
ちなみにこれは僕の経験ですが、この手の説教してるおっさんは日本人の新卒学生とかに対してはやたら厳しいんですけど、海外採用の若者や外資系企業から中途で入ってきた人の同様の振る舞いに対してはおとなしいという習性がありますね。