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ゆとり世代の話

僕は1990年代前半生まれなのでいわゆる「ゆとり世代」のど真ん中なわけですが、「ゆとり世代」批判を見るとついつい反応してしまいます。さて、昨日の記事にこんなのがありました。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130519/fnc13051912000000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130519/biz13051907070019-n1.htm
同じ産経ニュースの経済カテゴリの記事ですが、タイトルからは全然関係ないように思えますし、実際途中までは全然関係ない記事です。しかし、後半のゆとり世代批判への展開が似ています。

以下、2つの記事を一部引用します。

正解が無く、判断が難しい中で、学生自身にある程度の選択権を持たせ、どのような行動に出るのかを見ているのである。現在の就職活動生は、ちょうど「ゆとり世代」に当てはまる。彼らは、指示されたことは着実に遂行できるが、裁量を与えられた際には戸惑ってしまい、物事の判断ができなかったり、前に進められなかったりすることが多い。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130519/fnc13051912000000-n3.htm

松本さんはゆとり教育の影響を指摘。競争や体罰なく育ったことで、「極めて合理的な思考を持つ一方、理不尽に対する耐性が落ち、『(上司が)やれと言えばやる』というような社会の状況に適応できなくなったのでは」とみる。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130519/biz13051907070019-n2.htm

はぁ…。

指示待ち人間は世代の問題なのか?

まず1つ目の記事については、そもそも採用選考において服装で判断する時点でどうかと思いますが(まあこの記事を書いたのは就活塾とやらの人らしく、企業の人事の方でもないようなので、完全に憶測でしかありませんが)、それについては置いときましょう。
で、肝心のゆとり世代に関する描写ですが、「指示されたことは着実に遂行できるが、裁量を与えられた際には戸惑ってしまい、物事の判断ができなかったり、前に進められなかったりすることが多い」そうです。なるほどなるほど。仮にここで書かれてることが本当だとしたら、指示されたことが着実に遂行出来る時点で充分じゃないですか。後半についても、裁量の与え方の良し悪しは考えないんですかねえというのが疑問です。少なくとも例として上がってるように「服装自由」とか言っておいて、スーツじゃなかったら場に相応しくないとか言い出すのは、とてもまともとは思えませんが。
というかですね、じゃあゆとり世代以外の世代は、指示されたことが着実に遂行できた上で裁量が与えられた場合でもうまくこなせるってことなんですかね。すげえ。個人的には別に世代の問題じゃないような気がしますが。あと、そもそもゆとり教育っていうのは従来の詰め込み型教育が問題だからスタートしたわけで、むしろ旧世代の方々のほうが指示待ち人間が多いと思んですが違うんでしょうか。加えて言うと、我々の世代はGoogleという革命的ツールがありますので、「◯◯やっとけ」って言われたら分からんなりにもググってなんとかそつなくこなす人が多いように思います。

ゆとり世代じゃなくて合理世代と言おう

2つ目の記事も「ゆとり世代は競争や体罰を経験していない」という、よくあるパターンの1つですね。“競争”の定義がよく分かりませんが、別に僕らも競争してないわけじゃないですよ。例えば学力についてで言えば、確かに、全体的には下がっているかもしれませんが、それはこれまですくい上げようとしてきた下位層をそのままほっとくようになった*1だけかと。中位以下の学生はともかくとして、上位層に関してはむしろ技術的に先進化しており、、英語や国語なんかは問題の分量がかつてに比べてかなり増えている*2というのもあったりします。単純に倍率をくぐり抜けるという意味での競争ならあまりしていないかもしれませんが、それだけが競争じゃないですよね?*3
後半の「理不尽に対する耐性が落ち〜」のくだりは結構イラつきますね。いや、確かに世の中には理不尽なこともありますよ。でもそれを人為的に与える必要はないでしょ。っていうかだったら「理不尽世代」と「合理世代」に分ければいいだろって話。そういう視点で考えると、今は合理世代の進出によって、理不尽世代がこれまでのやり方ではうまく人を動かせなくなってると見ることができます。合理世代は、どうすれば人が合理的に動くかわかっているので、同じ合理的思考の後輩の動かし方は分かるはずです。となると、理不尽世代が滅びればかなり良い社会になりそうですね。

最後に

とまあ産経新聞に釣られてしまったわけですが、なんでもかんでも世代の問題にすり替えるタイプの人間になりたくないものです。ファック。

*1:http://benesse.jp/berd/berd2010/center_report/data05.html

*2:大学入試英語問題語彙の妥当性と実用性の時代的変化の7ページ目あたりのデータが面白いです

*3:ちなみに受験の倍率に関してはこういうデータもあります。参考までに。東大入試に見る合格者と入学辞退者の推移