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大友克洋監修の映画「SHORT PEACE(ショート・ピース)」

少し遅くなってしまったんですが、映画『SHORT PEACE』観てきました。やってる劇場の中では最寄りだったからというだけの理由で丸の内ピカデリーに行ったらサインとか置いてあってラッキー。

「SHORT PEACE」とはどんな作品か

5作品のオムニバス

映画『SHORT PEACE』オフィシャルサイト
「SHORT PEACE」は、「九十九」「火要鎮」「GAMBO」「武器よさらばにオープニングアニメーションを加えた5つの映像作品のオムニバス形式となっています。そういう意味では、大友克洋監修の映画「MEMORIES」に近いカンジですかね。


テーマは日本

全体を通しての統一テーマは“日本”。映画公式サイトやポスターも日の丸をイメージしたデザインとなっています。
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↑映画公式サイトのスクリーンショット


タイトルについて

「SHORT PEACE」というタイトルを聞くと、漫画の単行本の方の「[asin:4575930334:title=ショート・ピース]」(作・大友克洋)を彷彿とさせますが、あくまでタイトルとしてインスパイアされてるだけであって、内容は全く関係ありません。5つの作品のうちでも、大友克洋氏の漫画作品が原作となっているのは「武器よさらば」のみです。
ちなみに「武器よさらば」が収録されているのは「[asin:4063131459:title=彼女の想いで…]」と「[asin:4063050041:title=大友克洋アートワークKABA]」の2冊となります。


それぞれの作品についての感想

オープニングアニメーション

神社でかくれんぼしてた女の子がいつの間にか知らない場所に入り込んで、そこで出会ったウサギを追いかける、という流れです。おそらく「不思議の国のアリス」をもとにしているのだと思われます。
登場する女の子、麻衣の声優は、Twitterで有名な名前を言ってはいけないあの子役が担当。


他作品と比べるとポップな印象で、音楽もテクノっぽい曲を使っていてかなり現代的な映像作品となっています。クールジャパンってカンジ。


九十九

九十九と書いて「つくも」と読むのはご存知かと思いますが、この話は古い道具などに宿るという「付喪神」をモチーフにした作品です。日本の神道の精神性を現した作品ですね。CGが多用されてる作品で、和柄の傘や反物などが鮮やかに描かれています。ただ、ちょっと人物の動きはぎこちないかな。


大雨の中、行脚してる最中に見つけた古びた祠で休むことにした男が、眠っているいつの間にか知らない部屋にあがっていた。そこで古い傘や反物に取り囲まれるのだが、修繕師である男がそれらを直していく。しかし、男の前に繕うことができないほどボロボロとなった巨大な付喪神が現れる…。


というストーリーなんですが、これってアレですよね。千と千尋の神隠しにおけるオクサレ様のくだりで宮崎駿が伝えようとしたかったことを切り出しただけですよね。最後に出てくる付喪神とか完全にオクサレ様でしょ。なんなら蛇の目傘の蛙も千と千尋に出てくる青蛙に似てる気がする。


ちなみに声優は山寺宏一悠木碧草尾毅というやけに豪華な編成。草尾毅ってイケメンボイス以外にもあんな声だしたりするんだなー。



火要鎮

こちらは大友克洋氏が監督・脚本を務めた作品です。4作品の中で最も個性的な作品で、絵巻みたいなカンジで上下にフレームが入って、画面の移動とともにフレームも動いたり、変化したりします。


ストーリーとしては、古典の「筒井筒」(伊勢物語と実際のあった江戸の大火を絡ませたような物語で、序盤は井戸を中心として、子供の頃~成人と情景が移り変わります。


江戸の大火をモチーフに男女の恋を描いており、燃え上がる情念のメタファーとして火事が用いられています。時代考証など、かなり丁寧に作りこまれた作品で、江戸の町の空気感を緻密に描きつつ、日本的な火の表現を新たに構築するなど、非常にハイクオリティな映像表現として仕上がっています。実際に、文化庁メディア芸術祭でも大賞をとったりしているようです。



GAMBO

端的に言うとゴジラですね。構図的には。


昔々あるところに白いヒグマ(アルビノ)、ガンボが居て、野武士たちがそれを倒そうとするも返り討ちに合っていた。一方で、宇宙船?でやってきた鬼が、とある村の女を次々にさらっており、最後に残った少女、カオを差し出さなければならないという状態となっていた。
そのガンボとカオが心を通わせた結果、ガンボが鬼に闘いを挑む、というお話です。


ガンボ&野武士連合軍vs鬼の構図がゴジラ自衛隊vsデストロイヤー他の構図に似てると思ったのは僕だけですかね。


4作品の中では最もエグい作品で、ガンボと鬼の肉弾戦もそうですが、鬼にさらわれた村の女性が宇宙船?っぽいところに閉じ込められて鬼の子どもを孕まされてるところとかはウッってなりました。日本の昔話でありそうな、「鬼がやってきて女をさらって行く」という部分をリアルに描いたというカンジでしょうか。


ちなみにキャラデザはエヴァでお馴染み貞本義行さんです。



武器よさらば

他の作品は江戸時代や戦国時代?あたりの日本を描いた作品ですが、武器よさらばは近未来の東京を描いたSFモノです。文明崩壊後の世界において、遺構に残された武器を採掘する任務を負っている小隊と無人兵器との戦闘が描かれています。


プロテクションスーツにスナイパーライフルに固定ランチャーにと、こう男の子心をワクワクさせるようなアイテムがどんどん出てきて、スピード感のあるアクションを展開。ラストはドライに締めくくられます。ある意味で、4作品の中で一番大友克洋っぽい作品と言えるかもしれません。


脚本・監督はメカデザで有名なカトキハジメさんということもあり、無人兵器「ゴンク」やプロテクションスーツなどのデザインはいいっすね。また、初監督作品らしいですが、そうは思えないほどよくできた構成・カメラワークとなっています。



総評

全体的にクオリティが高く、飽きることなく楽しめました。個人的に順位をつけるとするならば、「武器よさらば」→「火要鎮」→「GAMBO」→「オープニングアニメーション」→「九十九」ですかねえ。「武器よさらば」と「火要鎮」のところは人によって評価が別れそう。


あと、今回のテーマは日本という事だったんですが、それでいうとちょっと時代が偏り過ぎかなーと。まあゆるいテーマらしいんで別にそこのバランスとか考えて作品を作る必要もないですが。ただ、もう少し現代(戦後とか90年代後半とか)を描く作品があっても良かった気がします。