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さらば愛しき丸山書店よ


※この話は、何かに対する批判ではなく、ただ起きた事実に、僕が悲しむというだけのものです


11月30日、丸山書店が閉店した。
といっても多くの人は丸山書店が何か分からないだろう。
簡単に説明すると、京都に数店舗チェーン展開していた書店で、どの店舗も大きくも狭くもない、これといって特徴のない、いわゆる一般的な本屋さんというカンジの店だった。そのうち、高野にあった店舗にはよく通わせてもらっていた。書店の24時間営業の草分けとなった店らしく、1987年から最近まで、24時間営業を続けてきたそうだ。今年になってから深夜3時までの営業となっていたが、それでも夜遅くまでやっている数少ない書店であり、サークルの例会のあとなどによく利用させてもらっていた。僕と同じような京大生も多いと思う。


終わりはあっけなかった。


閉店の少し前に、元書店員のアルバイトをしていた知り合いから「丸山書店が閉店するらしいよ」という噂を聞いてはいたが、閉まるにしても1、2ヶ月あとのことだと思っていた。噂を聞いた4日後、Twitterで「本日22時をもって閉店します」という知らせを見かけ、すぐに駆けつけた。店はもう閉まっていたが、店の前には漫画好きの友人たちが何人か集まっていた。皆、丸山書店が閉店すると聞いて居ても立ってもいられなくなったのだろう。それぞれに、丸山書店を失った悲しみを語り合い、その日は帰路についた。


こんなことはよくある話だというのは分かっている。それでも、もやもやした気持ちは晴れない。



別の話をしよう。僕の実家がある町には以前、丸山書店のような書店が存在した。
小学校の頃、そこは“子供だけで行ってはいけない場所”に指定されていたこともあって、その店に行くというのはとてもわくわくすることだった。CDも取り扱っていたのだが、自分のお小遣いで初めてCDを買った店はそこだし、『GANTZ』の1巻を試し読みして衝撃を受け、そろばんをサボってお小遣いで続きを買ったのもその店だった。
その本屋も中学生の頃、同じように閉店した。別に、ちょっと足を伸ばせばもう少し大きな店があるし、そもそも中学は電車で私立の学校へ行っていたこともあって、学校周辺の本屋を利用していたので、そこまで日常に影響があったわけではない。ただ、それでも衝撃はあった。もうあの町で幼い頃の自分と同じような体験をする子供は現れないのだということに。




父の世代の人たちから、若い頃に足しげく通っていたミニシアターや名画座が消えて行く中で、「映画というものが終わっていく」という感覚に陥ったと聞く。実際には映画は終わってないし、古い作品はTSUTAYAに行けば借りることができるし、シネマコンプレックスに行けば新しい作品が上映されている。しかし、本当に何も変わっていないのだろうか。
いや、そんなのことはないだろう。実際にその時代を体験していないからうまく言えないが、おそらくミニシアターや名画座にあった“文化”は失われてしまっているのだと思う。




本や漫画を買うだけなら、Amazonこそもっとも合理的なシステムだと思う。すべての書店が潰れ、書籍を扱うのがAmazonだけになれば、返本も減って環境にやさしいかもしれない。家から一歩も出ることなく本が買えて、本好きとしては万々歳だ。だが、書店というのは本を買うためだけの場所ではない。文化を担う場所だと、僕は思うのだ。これは、「ネットショッピングでは実際に商品に触れられないから云々」といったような簡単な議論じゃなくて、もっと、こう原体験的な話だ。



最近、電子書籍の台頭で、「紙の本が失くなってしまうのでは?」といったような議論を聞くことがあるが、そんなに簡単に、「本」という人類史上最高の発明は失われないだろうと思う。だが、本屋はすぐに消える。所詮、一企業にしか過ぎないし、ジョブズやベゾスが居なくたって、ちょっと売り上げが落ちれば簡単に閉店する。丸山書店は客があまり入っていなかったというわけでもないし、なぜ閉店に至ったのかは知らないが、理由もよくわからないまま文化を担っていた場所は消失してしまう。




僕は、丸山書店でたくさんの漫画や書籍を購入した。閉店前に使い切ったポイントカードの点数は、周りの漫画好きにも引かれるくらいだった。それに立ち読みもいっぱいした。立ち読みしながら夜を明かすという経験はなかなかできるものじゃないと思う。少し前に閉店した丸山書店北白川店に関しては、その店が近くにあることが住まい探しの決め手になったほどだった。丸山書店は、僕にとって色々な思い出のある店だ。だが、それだけが僕を悲しい気持ちにさせるのではない。来年京都大学に入学し、高野周辺に住むことになる学生たちは、僕が体験してきたようなことを一切することができない。「普段使っていた店が閉店したせいで不便になる」、それ以上の悲しみと寂しさを、僕はあの日感じたのだ。




さようなら、丸山書店。

2011年11月30日 丸山書店高野店にて